チームの感情的知性は、チームを効果的に機能する力となります。メンバー間で、チームの感情的知性に対する相互理解が浸透していると、「波長の食い違い」など互いの感情や懸念に耳を傾け、メンバー間の士気が高まり、惜しみなく協力する気持ちが強まります。

チーム力学のモデル

メンバーの参加意識、協力やコラボレーション(協働)が高まった時、そのチームの創造性と生産性が向上することに関する実証研究は多数発表されています。
また、これらのチームパフォーマンスが最大に発揮する行動前提には、欠かせない基礎的条件があることがわかっています。

チームパフォーマンスを最大化させる基礎的条件

  1. メンバー間に信頼関係が築かれていること
  2. メンバー一人一人がチームへの帰属意識を持っていること
  3. 各メンバーがチームの強みを認識していること

チームの感情的知性に対するメンタルコーチングの役割

先に述べたチームパフォーマンスが最大に発揮する行動前提の基礎的3条件は、いずれにおいても、その中心は人間の感情です。

つまり、このようなメンバー間の信頼関係や参加意識は、メンバーの感情とうまく向き合えるチームの感情的知性の上に築かれるチーム環境から生まれます。

そして、このメンバーの感情とうまく付き合うために必要なものが、メンタルコーチングの役割といえます。メンタルコーチングを通し、行動や態度は最適化され、その結果、メンバーが、それぞれの役割に100パーセント打ち込めるようになります。

個人のコンピタンスと社会的なコンピタンス

個人の感情的感性(EI)という概念を提唱した心理学者のダニエル・ゴールマンは、Emotinal Intelligence(邦訳 「EQ こころの知能指数」)の中で、彼は、
「EIが高い人間は、みずからの感情の変化を意識し、これを制御できる。
そしてこのような意識と制御は自己の内面にも他者の内面にも向けられる」
と、EIが高い人間の特徴を説明しています。

つまり、「個人のコンピタンス」は、自己の感情を自覚・制御することから生まれ、「社会的なコンピタンス」とは、他者の感情を意識・制御することであるといえます。

チームEIを強化するための方法

バネッサ・アーク・ドリュスカット准教授とスティーブン・B・ウルフ氏による論文「チームEIの強化法」では、チームの感情的知性を高める方法として、チームのEIの規範を築くことを薦めています。グループの自己評価の場とフィードバックを求めましょう、と。

チームEIを高めることは、メンバーが身を粉にして働くことではありません。ハードワークしたメンバーに「ありがとう」と言うことです。メンバー全体で深く掘り下げて話し合うことではありません。発言しないでいるメンバーに「どう思う?」と尋ねることです。

このように他のメンバーにメンタルコーチングを通して接することで、偽りのない調和が生まれ、最適な緊張感が生まれ、効果的にチームが機能することにつながります。