アスリート達にハイパフォーマンスを発揮した試合の心理についてヒアリングをすすめていくと口を揃えて出てくる言葉に「うまくいく気がした」というワードがあります。試合前、試合中にうまくいく自分のイメージができていたと言い換えても良いかもしれません。俗にいう「根拠のない自信」と言えるかもしれませんね。おそらく、あなたも含め誰もが“感覚的”にわかっていると思います。自信があればうまくいきやすいと。だから、アスリートからも「どうすれば自信を持つことができるのか?」「自分はできると思い込めるのか?」と相談を受けます。

思い込みの威力を語る研究

この思い込みが発揮する威力に関連する事例としてオーストリアのザルツブルク大学の研究が参考になります。

この研究では2つのグループに運動テストを実施する実験でAグループは「一流アスリート」のイメージを頭に刷り込みんだ上で運動テストをし、Bグループは特に何のイメージも与えずに運動テストを実施しました。するとAグループの方が「自信の上昇による集中力のアップ」「パフォーマンスの向上」につながり運動テストの成績が良くなったのです。

この研究からひとつ仮説を立てられるとしたら「うまくいく気がする」「できる気がする」というような根拠のない自信は「理想像のイメージトレーニング」を重ねることで獲得できる可能性が高いということではないでしょうか?そして、その思い込みによる自己認識で行動をとる方が成長や結果につながる可能性があるということです。

実際に私が契約しているアスリートでプロのバスケットプレーヤーがいます。その選手が話していて面白いと思ったエピソードがあります。その選手は小学生や中学生の頃にプロの試合を観戦にいったときに自然とこう思っていたそうです。「このコートに立って自分はプレーするんだろうな」と。そう「このコートに立ってプレーしてみたいな」という憧れではなく、コートに立つことが決まっているかのようにプロ選手のプレーを観ていたらしいのです。そして、実際のプロ選手になり、はじめてプロの舞台で試合をしたときに緊張やびびる感情はなく、「良いプレーができる気がする」というイメージしかなかったらしいのです。それはきっとこどもの頃から常にプロの舞台でプレーするイメージを重ねていたプロセスが影響しているのでしょう。

謙虚vs自信

日本人の価値観として「謙虚」という言葉は大事なワードです。「自分はまだまだ」という謙虚さは成長の妨げになるという側面も考える必要がありそうです。逆に、今回のテーマである良い意味での「思い込み」をうまく使い成長につなげていきたいものです。そして、思い込みにはやはりイメージトレーニングが有効です。3年後、1年後自分は「こうなっている」というビジョンを描き、その自分のイメージを重ねることです。また、別の機会でビジョンメイキングの方法についても紹介していきたいと思います。